L-FABPの有効性

【CKD】「尿細管機能障害を伴う腎疾患」の
早期診断に

Key word:CKD(慢性腎臓病)

慢性腎臓病(CKD)とL-FABP:

尿中L-FABPは、ヒト腎生検組織の尿細管間質障害の程度と相関し[1]、尿細管に負荷されているストレスを反映するマーカーであり、非糖尿病性慢性腎疾患患者を対象にした臨床研究では、腎予後を予測する際に有用であることを明らかにしている[2]。尿中L-FABPは、従来のマーカーとして重要な尿蛋白に比べ高い感度で、腎疾患の進行する患者を判別できる。また、尿中L-FABPは腎疾患の進行とともに増加し、軽快とともに減少することから、腎疾患のモニタリングにも有用である。

A-1 尿細管間質病変の組織学的評価と尿中L-FABP

糖尿病性腎症(DN)と微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)

(c) 組織障害スコア(%)
組織障害スコア(%)

(d) 尿中L-FABP
尿中L-FABP

(c)両疾患群の尿細管間質障害スコア(%)と(d)尿中L-FABP(平均±標準偏差, **p<0.01対MCNS)(他の尿中指標では、両疾患群に有意差は見られない。)

(文献[3]内、菅谷 健 他, Modern Physician. 28(8), 2008.内 図3より一部改変)

A-2 糖尿病性腎症とMCNSの腎組織
(マッソン・トリクローム染色と脂肪染色)

糖尿病性腎症では、MCNSに比べ、強い間質尿細管障害を認め、尿細管において脂質の蓄積が確認された。

(e) 糖尿病性腎症(DN)
左)マッソン・トリクローム染色、右)脂肪染色 (e) 糖尿病性腎症(DN)

(f) 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)
左)マッソン・トリクローム染色、右)脂肪染色 (f) 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)

(文献[4]内、Sasaki, H. et al., Nephron Clin Pract. 112(3), 2009.内
Fig.1およびFig.2より一部改変)

対象:

CKD(慢性腎臓病)における組織学的な尿細管間質障害と尿中指標の相関を検討するため、腎生検および臨床経過にて糖尿病性腎症と診断されたネフローゼ症候群を呈する8症例と、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)12症例。

方法:

上記対象について、腎生検施行直前の入院時に24時間採尿し、尿蛋白、尿中アルブミン、尿中NAG、尿中L-FABPの測定値と病理組織学的評価とを両群間で比較した。

結 果

 尿蛋白、尿中アルブミン、尿中NAGについては両群間に有意差を認めなかったが、尿中L-FABPのみは糖尿病性腎症例にて有意に高値を示し、組織学的な尿細管間質障害の評価と一致した(図c,d)。

 従来の尿中指標では判別できないネフローゼ症候群における尿細管間質障害の程度を、尿中L-FABPが検出できたことから、より早期の糖尿病性腎症においても尿細管障害特異的に尿中L-FABPが出現する可能性が示唆された

B 血中L-FABPと尿中L-FABPの比較 (尿中L-FABPの腎疾患特異性)

ヒト肝疾患患者(71例肝疾患患者)、CKD患者(73例CKD疾患)、健常人(71例健常人) における a. 血中L-FABP b. 尿中L-FABP の比較
(平均±標準偏差, 対健常人p<0.05対健常人, 対CKD患者p<0.05対CKD患者, 対肝疾患患者p<0.05対肝疾患患者 )


(文献[5]内、Kamijo, A. et al., Mol Cell Biochem. 284(1-2), 2006.内Fig.1より一部改変)

対象:

L-FABPは肝臓や腸管にも発現しているため、肝疾患や腸疾患において、血中L-FABP濃度が上昇する可能性が考えられる。その際、尿中L-FABPが血中L-FABPの影響を受けるかどうか、臨床的検討が報告されている[5]

71例の腎機能正常の肝疾患患者(肝疾患患者)、73例の肝機能正常のCKD患者(CKD疾患)、71例の健常人(健常人)について、血中および尿中L-FABPを測定した結果を左図に示す。

腎機能正常の肝疾患患者において、血中L-FABPは健常人に比して7倍以上の有意な高値を示したが、尿中L-FABPは健常人と有意差がないことが確認された。

一方、肝機能正常のCKD患者において、尿中L-FABPは健常人、肝疾患患者どちらと比較しても有意に高値を示し、血中L-FABPは有意ではないが健常人に比して上昇傾向を示した。これは、CKD患者におけるクリアランス低下が原因と考えられる。

結果

これまでの検討では、血中L-FABPが高値を示す疾患であっても、腎機能が正常であれば尿中L-FABPは影響を受けず、性別や加齢による差異のないことが示唆されている。

尿中L-FABPは、従来からの尿中指標であるNAGやα1Mとは異なる機序により尿細管障害に鋭敏に反応し、腎組織から誘導排出される腎疾患特異的な指標であると考えられる。

参考文献

  • [1] Kamijo, A. et al., Urinary excretion of fatty acid-binding protein reflects stress overload on the proximal tubules. Am J Pathol. 165(4): 1243-1255, 2004. PubMed
  • [2] Kamijo, A. et al., Clinical evaluation of urinary excretion of liver-type fatty acid-binding protein as a marker for the monitoring of chronic kidney disease: A multicenter trial. J Lab Clin Med. 145(3): 125-133, 2005. PubMed
  • [3] 菅谷 健 他, CKDの新しいバイオマーカー Modern Physician 28(8): 1159-1162, 2008.
  • [4] Sasaki, H. et al., Urinary fatty acids and liver-type fatty acid binding protein in diabetic nephropathy. Nephron Clin Pract. 112(3): c148-156, 2009. PubMed
  • [5] Kamijo, A. et al., Urinary liver-type fatty acid binding protein as a useful biomarker in chronic kidney disease. Mol Cell Biochem. 284(1-2): 175-182, 2006. PubMed

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