バイオマーカーという言葉の定義
1998年、米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)によって、「病態生理学的な裏づけのもとに測定され、治療介入による薬理学的応答を評価しうる客観的指標」として定義されています。 2006年、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から公表されたCritical Path Opportunities List(クリティカル・パス計画リスト)の中では、臨床試験の合理化のために、薬剤反応性の高い治験登録者の絞り込みにバイオマーカーを活用することが提唱されています。
バイオマーカーの重要な役割
- 疾患の危険度の評価
- 早期の非侵襲的なスクリーニングと診断
- 疾患の層別化
- 予後予測および治療介入に対する反応性評価
などを行う際に臨床医の手助けとなるものです。
L-FABPというバイオマーカー
従来の腎疾患治療薬の開発には、腎機能低下の指標として血中クレアチニン値から換算したeGFR(estimated glomerular filtration rate)が用いられてきましたが、薬剤介入による用量反応性を臨床評価する上での応答が不十分と考えられ、腎疾患治療薬の治験が難しい一因となっています。 近年、プロテオミクス研究の成果に基づいた新しいバイオマーカーの探索や研究開発に、熾烈な各国競争が展開された結果、米国では当社が開発したL-FABPを含む複数の尿中バイオマーカーが大規模臨床試験のための測定項目として採択されました。
L-FABPというバイオマーカーを使用することにより、AKI(急性腎障害)やCKD(慢性腎臓病)を対象とした新たな治療薬の創出や、既存薬の適応拡大(効能拡大)などの期待を広げることができたと考えています。 日本国内では癌マーカーを主体としたゲノムバイオマーカーへの関心が高いようですが、今後は、尿中バイオマーカーを治験の効率化や疾病管理にも活用できるものと期待されます。