L-FABP
検体、測定
製品の性能・操作
保険収載情報
研究に用いる場合
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Q1L-FABPとは?
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A1L-FABPとは、Liver-type Fatty Acid Binding Protein(肝臓型脂肪酸結合蛋白)の略称で、肝臓と腎臓の 「近位尿細管」で特異的に発現する分子量14 kDaの脂肪酸結合タンパク質です。尿中L-FABPは、腎近位尿細管の細胞質由来の物質で、尿細管の虚血や尿細管への酸化ストレスによって尿中に排泄されるため、『尿細管機能障害を伴う腎疾患』の早期診断に有用です。
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Q2肝臓由来のL-FABPが、尿中に排泄されることはないですか?
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A2腎障害が起こり、肝臓から排泄されたL-FABPが腎臓で再吸収されなくなった場合に、尿中に排泄されます。(したがって、腎障害がない場合、肝臓から排泄されたL-FABPは腎臓で再吸収され、尿にはほとんど現れません) 劇症肝炎や肝腎症候群などの場合には、尿中L-FABPの約15%が肝臓由来となりますが、他のバイオマーカーと併用することで容易に区別できます。
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Q3尿中アルブミンとの違いは?
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A3尿中アルブミンは糸球体障害のマーカーで、ろ過機能が破綻した結果を示しています。糸球体障害の進行に伴い尿中への排泄量が増加していきます。それに対し、尿中L-FABPは尿細管の機能障害を反映するマーカーで、虚血や酸化ストレスに応答して尿中へ排泄されます。
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Q4有用性を教えてください
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A4詳しいご説明のページは、こちらをご覧ください。L-FABPの有効性
ELISA Kit
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Q1測定前に、検体の希釈は必要ですか?
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A1必ずしも必要ではありません。 L-FABP濃度でキットの測定範囲の上限を超えた検体については、標準緩衝液(0 ng/mL)で希釈して、再測定してください。
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Q2尿中クレアチニン補正は必要ですか? また、クレアチニン補正換算式を教えてください
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A2
原則、尿濃度の誤差を防ぐため、尿中クレアチニン補正が必要です。ただし、POCキットの測定結果は濃度での判定となります。
【換算式】
急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)の場合は、尿中クレアチニンの値自体が大きく変動する場合があるため、尿中L-FABP測定値の濃度も合わせてご報告し、先生方のご判断で、実測値または補正値を採用していただいています。
L-FABP(ug/g・Cr) = L-FABP (ng/mL)÷Cr(mg/dL)×100 -
Q3測定に最適な採尿のタイミング(早朝第一尿、随時尿、蓄尿)を教えてください
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A3早朝第一尿、随時尿、蓄尿のどれでも、尿中L-FABPは測定可能です。ただし、モニタリング時には、検体の条件をそろえることが望ましいです。
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Q4検体の保存方法と安定性を教えてください
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A4冷蔵(4°C)、または凍結(-20°C~-30°C、-80°C)で保存してください。
冷蔵(4°C)保存で48時間(2日間)まで、凍結(-80°C)保存で1年間までの安定性を確認しているため、冷蔵保存なら48時間以内に測定してください。
※冷蔵が難しい場合は、冷媒などを使用してください。 -
Q5検体の凍結融解において、注意すべき点はありますか?
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A5凍結(-80°C)保存した検体を融解して測定しても、測定値に影響はありません。ただし、凍結融解の「繰り返し」は避けてください。
※小分け保存が可能な場合は、小分け保存を推奨します。 また、融解後、検体が白濁する場合がありますが、測定は可能です。遠心分離で白濁を解消した後に測定しても、測定値に影響はありません。 -
Q6蓄尿(検体)に防腐剤を添加した場合、測定値に影響はありますか?
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A6塩酸を添加すると測定値に影響を及ぼす場合(本来のL-FABP値よりも、低い値がでる傾向)があります。アジ化ナトリウムやトルエンの添加は、測定値に影響はありません。
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Q7尿中L-FABP値の日内変動は認められますか?
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A7基準値をまたいで測定値が変動することは認められません。
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Q8共存物質の影響はありますか?
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A8【ELISAキット】
- ①遊離型ビリルビン: 19.7 mg/dLまで測定値に影響は認められません。
- ②抱合型ビリルビン: 21.8 mg/dLまで測定値に影響は認められません。
- ③溶血ヘモグロビン: 24.4 mg/dLまで測定値に影響は認められません。
- ④グルコース: 45.0 mg/mLまで測定値に影響は認められません。
- ⑤アスコルビン酸: 12.5 mg/mLまで測定値に影響は認められません。
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Q9血管造影剤が測定系に及ぼす影響はありますか?
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A9造影剤が尿中に出るクリアランスのタイミングではELISA値に影響はありません。(ベースラインの阻害もありません) 尿中L-FABPが上昇するのは造影剤自身の腎毒性ではなく、造影剤により微小腎血流低下(腎血管の攣縮 (れんしゅく) )が起こるためと考えられています。
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Q10ELISA法を用いる場合、測定機器として「AP-X」は使えますか?
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A10協和メデックス社の「AP-X」のような全自動マイクロプレートEIA分析装置や各社のマイクロプレートリーダーがご使用いただけます。
POC Kit
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Q1測定前に、検体の希釈は必要ですか?
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A1POCキットで測定する検体に希釈の必要はありません。
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Q2測定に最適な採尿のタイミング(早朝第一尿、随時尿、蓄尿)を教えてください
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A2いずれの尿でも(酸性蓄尿を除く)、尿中L-FABPは測定可能です。ただし、モニタリング時には、検体の条件をそろえることが望ましいです。
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Q3測定に最適な検体条件(新鮮尿、冷蔵尿、凍結尿)を教えてください
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A3いずれの尿も測定できます。
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Q4室温での検体の保存安定性を教えてください
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A4室温保存の場合8時間程度であれば測定結果に与える影響は軽微であると考えます。まれに高濃度のL-FABP(数百ng/mL)が検出された尿検体のなかには、継続的にL-FABP値が上昇する検体も確認されているため、採尿後すみやかに測定していただくことを添付文書に記載しています。
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Q5検体に異物が混入している場合、POCの測定に影響はありますか?
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A5
検体に異物の混入や白濁が認められる場合、正しい判定結果が得られないことがあります。前処理剤と混和する前に、遠心分離を行うか室温・暗所に30分以上静置し、異物を吸引しないようゆっくり上清から検体100μLを採取してください。赤血球(血尿)や感染症・炎症などによる細胞の剥がれ落ち、糸球体や尿細管組織の脱落なども異物として挙げられます。
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Q6粘性のある尿検体をPOCで測定することは可能ですか?
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A6粘性のある尿検体はメンブレンの網目状構造を通過できず液止まりを起こしたり、流速が通常より極端に遅くなることがあります。このような検体においては正しい測定結果を得ることができないため、定量キット「レナプロ®L-FABPテスト HS(高感度)」での測定をお勧めします。
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Q7共存物質の影響はありますか?
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A7【POCキット】
- ①遊離型ビリルビン: 19.7mg/dL まで測定値に影響は認められません。
- ②抱合型ビリルビン: 21.8mg/dL まで測定値に影響は認められません。
- ③ヘモグロビン: 97.4mg/dL まで測定値に影響は認められません。
- ④グルコース: 1,000mg/dL まで測定値に影響は認められません。
- ⑤アスコルビン酸: 1.6mg/mL まで測定値に影響は認められません。
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Q8投薬や血尿などの影響で尿に着色がある場合、POCの測定結果に影響はありますか?
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A8
検体に濃い着色が見られる場合、正しい判定結果が得られないことがあります。たとえばリファンピシン投薬患者様の尿をPOCで測定した場合、メンブレン全体がオレンジ色に染まりテストラインの色調と被るため、誤判定するおそれがあります。(下表参照)また、血尿においてもメンブレン全体が着色することがあります。正しい判定結果が得られなかった場合は、検体が投薬の影響を受けないタイミングで再測定いただくか、定量キット「レナプロ®L-FABP テスト」での測定をお勧めします。
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Q9末期腎不全(第4期、ESKD)の患者様において測定することは可能ですか?
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A9糖尿病性腎症において病期別(1期から4期)に尿中L-FABP排泄量を測定したところ,病期と相関が認められたため,腎不全期においても尿中L-FABPでの測定可能です(Diabetes Care 34:691-696, 2011. PubMed)。ただし、末期腎不全の確定診断が出ている患者様については、保険適用外になる可能性がありますので,検査前に確認することをお勧めします。
ELISA Kit
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Q1製品について教えてください
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A1ELISA Kitは定量的にL-FABPを測定することができる用手法検査キットです。本検査には吸光度を測定するプレートリーダーが必要になります。
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Q2測定原理(ELISA法)を教えてください
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A2以下より閲覧可能です。 測定原理
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Q3製品の構成試薬を教えてください
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A3以下より閲覧可能です。 製品構成
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Q4製品の貯蔵方法・有効期間を教えてください
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A4貯蔵方法:2~8°C保存(凍結を避けてください)
有効期間:24ヶ月(使用期限は外箱に記載) -
Q5添付文書は入手できますか?
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A5以下より閲覧可能です。 添付文書
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Q6製品の販売価格や、利用可能な検査センターを教えてください
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A6こちらでご確認ください。 製品購入方法・お問い合わせ先
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Q7購入した製品を返品できますか?
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A7製品の性質上、返品はお断りしております。お間違えのないよう、よくご確認の上、ご購入ください。
POC Kit
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Q1製品について教えてください
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A1ベットサイドで尿中L-FABPの半定量的な測定が可能な簡易キットです。特別な装置は必要なく、尿検体とキットのみで測定が可能です。
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Q2POCの意味と測定原理を教えてください
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A2POCはPoint-Of-Careの略語で「患者様のすぐそば・近くでおこなう診断/検査」を意味します。本品はインフルエンザ判定キットと同様にイムノクロマト法を測定原理に用いた簡易型迅速測定キットです。 測定原理
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Q3製品の貯蔵方法・有効期間を教えてください
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A3貯蔵方法:1~30°C保存(凍結を避けてください)
有効期間:18ヶ月(使用期限は外箱に記載) -
Q4添付文書は入手できますか?
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A4以下より閲覧可能です。 添付文書
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Q5半定量のPOCキットと既認証品目である定量キットの相関データはありますか?
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A5
POCキットと2品目の定量キットとの相関結果は良好で、いずれの定量キットにおいても一致率≧90%でした。
・CKD外来患者106例及びICU入室患者29例、計135例①POCと既認証品「レナプロ®L-FABP テストTMB」との相関性試験成績尿 半定量POC 合計 < 12.5 ≧ 12.5、< 100 ≧ 100 レナプロ®
L-FABP
テストTMB< 12.5 60 0 0 60 ≧ 12.5、< 100 8 33 0 41 ≧ 100 0 3 31 34 合計 68 36 31 135 一致率91.9%(124/135) ②POCと既認証品「レナプロ® L-FABP テスト」との相関性試験成績尿 半定量POC 合計 < 12.5 ≧ 12.5、< 100 ≧ 100 レナプロ®
L-FABP
テスト< 12.5 62 1 0 63 ≧ 12.5、< 100 6 32 0 38 ≧ 100 0 3 31 34 合計 68 36 31 135 一致率92.6%(125/135) POC判定スコア分布図 -
Q6どのような診療科の利用に適していますか?
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A6
- ①ICU・救命救急センター
- ②循環器科
- ③心臓血管外科
- ④腎臓内科
- ⑤糖尿病内科
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Q7実際にどのような診療科で使われていますか?
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A7腎臓内科、糖尿病内科は素より、最近では循環器科、心臓血管、急性(ICU,血液浄化)、小児専門施設などでAKIバイオマーカーとしての採用が増えています。 測定担当者は検査技師が多いようですが、POCキットは機器類が不要のためクリニックにも導入いただいています。なお、定量測定においては健康診断のオプション項目としてもご採用いただいています。
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Q8POCの試供品の提供は可能ですか?
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A8ご希望内容をシミックホールディングス(株)L-FABP事業部までご連絡ください。
TEL:03-6779-8017 お問い合わせフォーム -
Q9製品の販売価格や、販売代理店を教えてください
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A9こちらでご確認ください。 製品購入方法・お問い合わせ先
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Q10L-FABPについて、説明会・勉強会・技術指導の依頼は可能ですか?
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A10Web会議システムでの対応も可能ですので、 ご希望内容をシミックホールディングス(株)L-FABP事業部までご連絡ください。
TEL:03-6779-8017 お問い合わせフォーム -
Q11購入した製品を返品できますか?
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A10製品の性質上、返品はお断りしております。お間違えのないよう、よくご確認の上、ご購入ください。
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Q1測定項目名
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A1ヒトL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)(尿)
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Q2点数、診療報酬点数区分
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A2【実施料】
点数 :210点
診療報酬点数区分 :D001 尿中特殊物質定性定量検査
【判断料】
D026 検体検査判断料 1 尿・糞便等検査判断料として34点算定できる。 -
Q3算定上の留意事項(縛り)
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A3原則として3月に1回に限り算定する。ただし、医学的な必要からそれ以上算定する場合においては、その詳細な理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
なお、内容については別途お問い合わせください。 お問い合わせフォーム -
Q4尿中アルブミン(他項目)と同時算定できますか?
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A4
L-FABPは、以下記載の項目とは別の独立した項目にあるため、同時算定可能です。
「尿中マイクロトランスフェリン、尿中マイクロアルブミン及び尿中Ⅳ型コラーゲンは、糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る)に対して行った場合に、3月に1回に限り算定できる。なお、これらを同時に行った場合は、主たるもののみ算定する。」
※β2やNAGは算定上の留意事項はありません。 -
Q5保険適用となる疾患名を教えてください
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A5
中央社会保険医療協議会(以下、「中医協」)の資料から、保険の算定の対象となる主な疾患は
- ①eGFR≧60の 継続的に治療を受けている糖尿病患者、
糸球体腎炎などの慢性腎臓病(CKD)が疑われる患者 - ②急性腎障害(AKI)が確立されていない患者、
薬剤性腎障害の患者、
敗血症の患者、
多臓器不全の患者 - 他)脂質異常症による尿細管障害が疑われる患者、
高血圧症による尿細管障害が疑われる患者
などが挙げられますが、先般、新しく保険適用となった項目のため、保険の適応疾患として具体的な疾患名はまだ特定しかねているのが現状です。
また、地域によって算定条件が異なる場合も考えられるため、算定事項等の詳細につきましては社会保険診療報酬支払基金(支払基金)や国民健康保険団体連合会(国保連)にご確認・ご相談ください。 - ①eGFR≧60の 継続的に治療を受けている糖尿病患者、
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Q6腎不全の患者様に適用してもよいですか?
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A6腎不全患者の方の尿検体を測定することは可能です。 しかし、本検査の目的は 『尿細管機能障害を伴う腎疾患診断の補助 』であり、本検査は 「腎機能が低下する以前の患者に対して有用 」とされているため、腎不全患者の方における測定意義があるかは不明です。
また、保険償還が受けられるか否かも不明です。 -
Q7いつから保険収載されましたか?
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A72011年8月1日 からです。
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Q8これら保険収載情報を、参照できる資料を教えてください
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A8[Q1~2]
- ①厚生労働省告示第七十六号 <平成24年3月5日 官報 号外第49号>
- ②中医協 総-2 H24 2 10_答申書(案)(平成24年度診療報酬改定について)【p.170】
- ③改訂版 糖尿病診療ハンドブック(羊土社)【p.361、362】
- 「診療報酬の算定方法に一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成24年3月5日 保医発 0305第1号)
- 中医協資料<中医協 総会(第194回)議事次第 臨床検査の保険適用について>【p.1、6、7】
- 中医協(総-3)23.7.27付け答申
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Q1L-FABPと対比して調べた方がよい腎障害マーカーはありますか?
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A1NAG、尿蛋白(尿中アルブミン)をお勧めします。
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Q2生検サンプルのようなヒト腎組織についても検体として測定可能ですか?
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A2組織量にもよりますが、ホモジネートした破砕液上清をELISAで同様に前処理して測定可能です。ただし、本製品は尿中L-FABPの測定を目的としたキットのため、性能は保証いたしかねます。
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Q3血中のL-FABPを測定することは可能ですか?
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A3測定は可能です。 しかし、本製品は尿中L-FABPの測定を目的としたキット(製品)のため、性能は保証いたしかねます。また、血中のL-FABPの安定性、正常上限値なども不明です。
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Q4マウスを使用した研究を行いたい場合はどうすればよいですか?
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A4健常マウスでは、腎臓のL-FABP発現が抑えられているため、尿中L-FABPの評価にはヒト型L-FABPトランスジェニックマウス(hL-FABP Tgマウス)を用いる必要があります。
Tgマウスのご利用に関してはフォームよりお問合せください。
ラット、イヌ、ネコ、サル、ブタを使用した研究については動物用L-FABP測定キットのELISAキットをご使用ください。詳細はこちら -
Q5測定の技術指導・説明会・勉強会の依頼は可能ですか?
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A5ご希望内容をシミックホールディングス(株)L-FABP事業部までご連絡ください。
TEL:03-6779-8017 お問い合わせフォーム
尚、詳細な使用方法は、以下より閲覧可能です。
スタンダード:添付文書 p.2「1準備-3)L-FABP標準溶液の調製」に該当
測定:添付文書 p.2「3測定操作方法」に該当
添付文書